はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『ふたりの名前』(『1ポンドの悲しみ』より)

石田衣良の短編『ふたりの名前』を再読した。
伊坂目当てで買った短編アンソロジー『短編工場』(集英社文庫)に、収録されていたのだ。『1ポンドの悲しみ』(集英社)は、10年前に読んでいる。やはり、跡形もなく記憶からは抹消されていたので、これが再読と言えるかどうかは、悩むところだ。

『1ポンドの悲しみ』は、30代の女性視点で描かれた恋愛短編集。
『ふたりの名前』は、共に暮らし始めて1年弱のふたりを描いている。
朝世と俊樹の暮らしには、決め事があった。それぞれの持ち物に、自分のイニシャルをかき込んでおくことだ。卵一つ一つにもAとTの文字がかかれ、薄型テレビの裏側には巨大なTの文字が、ワイングラスの底には小さくAの文字がかかれている。そんなふたりが子猫を飼うことになった。以下、本文から。

「おでこのまんなかにAって書かないのか」
朝世はそんなことは考えもしなかった。憤然としていった。
「書くわけないじゃない。この子は家族の一員で、俊樹のテレビなんかとはくらべものにならないんだから」
しばらくのあいだ車内は静かになった。恵比寿に近づいてから、俊樹がようやく口を開いた。
「この一年でイニシャルを書かなくていいものがうちにきたのは、初めてだ。そういうのがだんだん増えていくと、ぼくたちの暮らしも変わっていくのかもしれないな」
いつになくまじめな口調にはっとして、朝世は運転中の横顔に目をやった。俊樹は口元を結んで、正面を見つめている。朝世は片手で子猫をなでながら、シフトレバーにのせられた俊樹の手にもう一方を重ねた。

そして、猫に名前をつけるまでの間に起こった出来事により、ふたりは気づいていく。名前とは、誰の所有物かを表すだけのものじゃなく、大切な誰かを思う時に、心のなかでそっと唱える呪文のようなものなのだと。

10年前にも、図書館で借りました。本屋で平積みされている新刊が、
カウンター向かい側に、無造作に置かれていたのが印象的で覚えています。
田舎の図書館を利用する上での、大きな利点です。
借りに行った図書館の前で、シオカラトンボを見かけました。
写真には撮れなかったけど、小さい秋、見つけた ♪
これも、田舎の図書館の利点?(笑)

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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