はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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チェシャ猫の秘密基地

ウッドデッキで洗濯物を干していたら、庭をゆっくりチェシャ猫が通過した。隣の林との境界線の辺りだ。チェシャ猫とは、最近見かける縞模様の太った猫のニックネーム。わたしが勝手にそう呼んでいるだけなのだが馴染みの顔だ。
だがこのところ、何か我が物顔で歩く姿に、疑問も感じていた。すっかり自分の家の庭を歩く様子なのである。
なので、洗濯物を干す手を止め、様子をうかがった。すると、するりと消えたのだ。まるで『不思議の国のアリス』が、うさぎ穴に落ちたかのように。
近づいてみると、なんてことはない。林の木々の払った枝が積んであるなかに、ちょうどいいスペースがあり、そこで丸まっていた。
「こんなところに、秘密基地が、あったのかぁ」
自分の庭を歩くような顔をしていたのにも、うなずける。
チェシャ猫は、わたしに「ふー! うー!」と、うなり、出てこない。隣の林に居る分には、こちらも特にかまわないので、そっとしておいた。

「秘密基地、昔、作ったなぁ」子どもの頃を、思い出す。
生まれ育った東京の板橋は、まだまだ田舎で、林と畑だらけだった。川を越えた丘は、子ども達には「お化け山」と呼ばれていて、ただ何か恐いことが起こるかもしれないスポットとして、楽しまれていた。他に「鬼ばば山」「アベック山」があり、やはり、うっそうと木が茂った林だった。今考えると、暗くて人目がつかない場所に行かないようにと、大人達が、そう呼び始めたのかも知れないとも思うが、そういう場所だからこそ、秘密基地作りには最適だったのだ。その、ベタすぎて笑っちゃうネーミングにも疑問を持たず、素直に呼んでいた自分。近所の男の子達と、捨てられた物や木の枝を集めて、熱心に秘密の場所を作り上げていった自分。今ではその存在自体が、不思議に思える。

ふと気づくと、チェシャ猫の細くなった瞳には、遠い遠い日が映っていた。

狭い場所に入り込むのが、好きなんだよね。きっと。

うなって威嚇していますが、あんまり迫力ありません。

切った枝が積んであるだけ。そこに草や蔓が伸びて絡まっています。
こんな場所だけど居心地、いいのかなぁ。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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