はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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蛙と夕立

ウッドデッキで洗濯物を取り込んでいたら、蛙に会った。冠をかぶった王様を連想させるような風格のある容姿に魅きつけられ、わたしは話しかけてみた。
「悩みがあるんだ。右に行こうか左に行こうか悩んでる」
蛙は、首を傾げ考えるようにしてから答えた。
「まずは、きみが持つ悪意が、問題だ」
「わたしが持つ悪意?」
わたしは、心の引き出しを開け自分の中の悪意を探してみる。
「右か左かは、後で考えればいい」
蛙は小さな子どもに言うようにゆっくりと言った。
「恨みも、理不尽な思いも、すべてを自分の中の悪意と共に、捨てるんだよ」
そして目を閉じ、そっと開いた。
「紙に書いて、燃やすといい」
アドバイスに慣れているようだった。
「悪意も弱さも誰もが持っている。目や耳を持っているのと同じでね」
蛙はちょっと笑ったような表情を見せた。
「道はどこかで繋がっているよ。右に行っても左に行っても、先に行った友人達といずれ出会えるだろう。まずは余計な荷物を降ろすことだ」
そう言ってウッドデッキの下を覗き、話しすぎたかなという顔をした。
「ありがとう。水が欲しい?」
「いや。もうすぐ雨が降るよ。けっこうザーッと」
1時間後、蛙の言う通り雨が降った。夕立がザーッと降って去って行った。

蛙はウッドデッキの隙間に静かに消えた
今朝は富士山に初冠雪 冠を頭にのせた蛙を思う

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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