はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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ワインをくるくる回すのって

「ワインをくるくる回して飲むのって、なんかかっこつけっぽくない?」と思ったことはないだろうか。わたしはある。ああいう所作にはどうにも馴染めないと思っていた。ところが一冊の本を読み「ワインをくるくる回すのって、なんて素敵なんだろう」と真逆の感覚を持つようになった。
『センセイの鞄』川上弘美(平凡社)何度も読み返した大好きな小説だ。
37歳のOLツキコと70歳くらいだろうか高校の国語教師だったセンセイ。ふたりは駅前の一杯飲み屋で再会し、そこがおたがい馴染みの店だったこともあり、会えば酒を酌み交わすようになる。
「恋人に弁当をつくってあげたり部屋まで行ってこまめに料理を作ったりするのは趣味にあわなかった。そういうことをするとぬきさしならぬようになってしまうのではないかと恐れた。ぬきさしならぬようになってもかまわないようなものだったが、かまわないとかんたんに思うことができなかった」
そんな不器用なツキコはセンセイとの時間に馴染んでいく。センセイはいつもひょうひょうとしている。ふたりに絡むだけ絡んで眠ってしまった若者のピアスをすったこともある。
「ワタクシは相手をこらしめるためにこういうことをしたのではありません。ただ、いまいましく思っている自分を満足させるためにすったのです。そこのところを勘違いなさらぬよう」愉快だ。
しかしツキコは高校時代の友人小島くんとも再会することになった。
「こうやってさ、くるくるまわしをしてる奴が世の中にはよくいてさ、見るたびに気恥ずかしいって俺も思うんだけど」と小島くんは、こじんまりしたバーのカウンターでツキコに言うのだ。
 
今では赤ワインが空気を含むことによって味をまろやかにし、それはくるくるによる変化であることも知っている。家で夫と晩酌する時でさえくるくるやる。もうちっとも素敵でもなんでもなくわたしの中にさらりと馴染んだ感覚だ。それに比べるとまだまだ修行中だが、一杯飲み屋でひとりゆったりとツキコのように酒が飲めるようになりたい。そういう女性にわたしはなりたい。

びっきーの散歩コースにあるワイン用の葡萄畑 もうすぐ収穫かな

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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