はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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忘れていた気持ち

2か月ぶりに会った南アルプスの彼は、立派なパパになっていた。贔屓にしているマッサージ師くんに、痛めた右肩をほぐしてもらいに行ったのだ。
「明けましておめでとうございます」と彼。
「あ、そう言えば、赤ちゃん生まれたんだよね?」とわたし。
「あ、はい。ぶじパパになりました」
「おめでとう!」「ありがとうございます」
などと新年の挨拶だか何だかわからない会話を交わした。
マッサージをしてもらいつつ、彼の話を聞く。どのミルクがいいだの、赤ちゃんを入れる際の風呂場の温度のことで夫婦もめているだのを楽しそうに語る彼は、本当に2か月前とは、もう別人。すっかり立派なパパになっていた。
「外に出ても、子どもを見る目が変わりましたね。小さな子を見ると、にやにや笑っている自分に気づいてハッとしたり。まるで怪しいおじさんです」
「それは、怪しいかもねー」
笑いながら聞くほのぼのした話に、からだと一緒に心もほぐれていく。しかし次に続いた言葉には、感じ入るものがあった。
「ニュースを見ても、いじめだとか、子どもを取り巻く環境が、心配でたまらなくなりました」
ああ彼は、本当にお父さんになったんだなと思った。親になってみて、子どもがどんなに可愛いものか、愛おしいものか、そしてどんなに心配なものか、自分の視点でちゃんと見て、ちゃんと感じている。生まれたばかりの赤ちゃんの成長は目を見張るものがあるだろうが、同時にパパとママになったふたりも、急成長を遂げているのだ。
自分もこうだったのだろうか。親になったという実感が、確かに感じたものがあったのだろうか。まるで覚えていない。なにしろずいぶんと昔の話だ。とうに忘れてしまった気持ちだった。どれだけ記憶の糸を手繰り寄せても、どうにも思い出せないまま家に帰り、ベビードレスを出してみた。初めての赤ん坊が生まれてくるのを楽しみに25歳のわたしが編んだものだ。いまだ真っ白なベビードレスは手に取ると柔らかく、一つ一つの編み目には、いつか何処かで忘れてしまったものが確かに編みこまれていた。

編み物。ハマった時期が、あったなぁ。
手は付けるんだけど長続きしない性格のみ、長続きしてます。
おしゃれなかぎ針編みの本も今は出てるし、図書館で探してみようかな。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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