はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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座席の上のハンカチ

先日、東京へ行った時のこと。
中央線の快速に乗った。席はまばらに空いていて、立っている人もいたが、余裕で座ることができた。荷物を膝に置き、文庫本を取り出す。そしてふと、向かい側の端の座席が不自然に空いているのを感じた。
開いている席には、ハンカチが置いてあったのだ。誰かの忘れ物だろう。
だが、ハンカチ自らの意思とは無関係に、その席を押さえているように見えた。席取りでハンカチを置く人も少なくない。見覚えのある光景。その威圧感を感じてか、その席に座ろうとする人はいなかった。

しばらくすると車両のすべての席は埋まった。もちろん、ハンカチが座っている席以外は、ということだが。
そこへ乗車してきた白髪の女性が、ハンカチを手すりに掛け、その席に座った。そしてしばらくして、立ち上がり、手すりのハンカチを座席に戻し、降車した。ハンカチはまた、自らの意思とは無関係に席取りをする羽目に陥った。

それを夫に話すと、意外な言葉が帰ってきた。
「それって、ネットワークだったりして」
ハンカチを置いた席に座る人は少ない。それを利用し、ハンカチを座席に置いておき、そのネットワークを知る人だけが座り、またハンカチを次の利用者のために戻しておくというものだ。
「まさか、ねぇ」わたしは答えたが、考えさせられた。
席を譲った経験は、何度もあるが、世の中善意だけで動いている訳ではないと知っている。遠い昔、大きなお腹でシルバーシートに座っていると、杖をついたお婆さんが乗って来た。他に譲る人はいなかったので、わたしが譲った。わたしに席を譲ろうという人はいなかった。

あのハンカチ(グレーのチェックだった)今は、どうしているのだろう。

これは、友人の雑貨屋さん『マッシュノート』で買ったタオルハンカチ。
カラフルなところも、鳥と花の模様も気に入っています。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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