はりねずみが眠るとき
昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
どれくらい田舎かというと
山梨の田舎町に住んでいる。
どれくらい田舎かというと、最寄りの駅まで歩いて、約1時間半。しかもそこは無人駅。もちろんスイカもパスモも使えない。切符さえ売っていない。まあ、すいすい改札を通り抜けられるところは自動改札と言えなくもないが、便利とはほど遠い。
無人駅を発着するバスなどあろうはずもなく、バスに乗るのなら2駅先の少し大きめの駅まで行くことになる。そのバスさえ2時間に1本もない上に、朝は遅く夕方は早くに店じまいをする。娘が自力で高校に通うことは、できない。
自転車なら、と思うかもしれないけれど、標高600メートルの我が家から急降下し、駅までふたたび同じ高さを登らなくてならない。歩くのとどっちがいいか、さあどうする? というような状況だ。
猿も恐い。今朝は、20匹ほど見かけた。赤ん坊を抱いた母猿、その周りをうろちょろしている子猿、からだの大きい雄猿。大小様々だ。彼らは人を見てもあわてて逃げる様子もなくマイペースで暮らしている。道路で溜まっている猿を押しのけて歩くには、多少なりとも勇気が必要になってくる。
当然、黒のフィットの出番となり、わたしが朝夕送り迎えをすることになる。
日が暮れて、誰もいない無人駅(という日本語が許されるならば)に、娘を待たせるわけにはいかないので、その時間にはケータイも携帯しメールチェックも怠らない。
「6時50分到着予定」
絵文字も顔文字もない無愛想な娘のメールに、夫は腹を立てるが、毎日お愛想を家族にふりまく女子高生の方がおかしいでしょうと、わたしは普通に返事を返す。彼女だって感謝の気持ちを伝えなくてはならない時には、きちんと伝えるのだ。こちらもこちらで返事は省き、夕食のメニューのみメールするのが習慣になった。
「ぱーぽつぁい(八宝菜)」「親子どーん」「鶏肉じゃが」など、夫がいない週の半分は、ひと品で野菜もたんぱく質もとれる簡単なものになる。
ちなみに親子丼を親子どーんと伸ばして発音するのは、中村航の『あのとき始まったことのすべて』(角川書店)の主人公が、給食で親子丼が出るたびに同級生の女子が「親子丼できたどーん」と言っていたことを思い出すというエピソードからきている。中村航の小説では『100回泣くこと』(小学館)がダントツにいい。それを文庫で買ってから一時期、娘とわたしの間で中村航ブームが訪れ、静かに去った。その名残りが「親子どーん」というわけだ。卵を落としてたっぷりと三つ葉を散らし、鍋にふたをした瞬間に「親子どーん、できたどーん」と二階にいる娘に声をかける。うちの親子どーんはとても美味い。
さて、ここがどれくらい田舎かというと、富士山と南アルプスと八ヶ岳が一望にできる人口五千人の町。数年前には村だった。うちから1分歩くと田んぼが広がり、2分歩けば山梨ワインのブドウ畑が広がっている。お米も野菜もとても美味しい。鳥の声や風の音が空に抜けていき、ふと無音を感じる瞬間がある。読書をするにはうってつけのいいところだ。
どれくらい田舎かというと、最寄りの駅まで歩いて、約1時間半。しかもそこは無人駅。もちろんスイカもパスモも使えない。切符さえ売っていない。まあ、すいすい改札を通り抜けられるところは自動改札と言えなくもないが、便利とはほど遠い。
無人駅を発着するバスなどあろうはずもなく、バスに乗るのなら2駅先の少し大きめの駅まで行くことになる。そのバスさえ2時間に1本もない上に、朝は遅く夕方は早くに店じまいをする。娘が自力で高校に通うことは、できない。
自転車なら、と思うかもしれないけれど、標高600メートルの我が家から急降下し、駅までふたたび同じ高さを登らなくてならない。歩くのとどっちがいいか、さあどうする? というような状況だ。
猿も恐い。今朝は、20匹ほど見かけた。赤ん坊を抱いた母猿、その周りをうろちょろしている子猿、からだの大きい雄猿。大小様々だ。彼らは人を見てもあわてて逃げる様子もなくマイペースで暮らしている。道路で溜まっている猿を押しのけて歩くには、多少なりとも勇気が必要になってくる。
当然、黒のフィットの出番となり、わたしが朝夕送り迎えをすることになる。
日が暮れて、誰もいない無人駅(という日本語が許されるならば)に、娘を待たせるわけにはいかないので、その時間にはケータイも携帯しメールチェックも怠らない。
「6時50分到着予定」
絵文字も顔文字もない無愛想な娘のメールに、夫は腹を立てるが、毎日お愛想を家族にふりまく女子高生の方がおかしいでしょうと、わたしは普通に返事を返す。彼女だって感謝の気持ちを伝えなくてはならない時には、きちんと伝えるのだ。こちらもこちらで返事は省き、夕食のメニューのみメールするのが習慣になった。
「ぱーぽつぁい(八宝菜)」「親子どーん」「鶏肉じゃが」など、夫がいない週の半分は、ひと品で野菜もたんぱく質もとれる簡単なものになる。
ちなみに親子丼を親子どーんと伸ばして発音するのは、中村航の『あのとき始まったことのすべて』(角川書店)の主人公が、給食で親子丼が出るたびに同級生の女子が「親子丼できたどーん」と言っていたことを思い出すというエピソードからきている。中村航の小説では『100回泣くこと』(小学館)がダントツにいい。それを文庫で買ってから一時期、娘とわたしの間で中村航ブームが訪れ、静かに去った。その名残りが「親子どーん」というわけだ。卵を落としてたっぷりと三つ葉を散らし、鍋にふたをした瞬間に「親子どーん、できたどーん」と二階にいる娘に声をかける。うちの親子どーんはとても美味い。
さて、ここがどれくらい田舎かというと、富士山と南アルプスと八ヶ岳が一望にできる人口五千人の町。数年前には村だった。うちから1分歩くと田んぼが広がり、2分歩けば山梨ワインのブドウ畑が広がっている。お米も野菜もとても美味しい。鳥の声や風の音が空に抜けていき、ふと無音を感じる瞬間がある。読書をするにはうってつけのいいところだ。
HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
ご意見などのメールはこちらに midukisae☆gmail.com
(☆を@に変えてください)
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