はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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「オオサワアリマサ」と唱える

南アルプスに彼がいる。疲れたときには電話して、車をとばして会いに行き、たっぷりゆっくり癒してもらう。
「もっと早く、来てくださいよ。ここまでひどくなるまえに」
行くたびに、叱られる。
彼はわたしが今まで出会ったなかで、最も優秀なマッサージ師だ。彼にマッサージしてもらった後には、からだ全体が、元に戻ったような感じがする。
たとえば、さっきまで数字の2だった自分が、1になってるような感じ。
「ありがとう」というわたしに、
「毎日意識して、背筋伸ばしてくださいね」
ちくりと注意することも忘れない。わたしは肩をすくめて、はーいと答える。
帰り道はビートルズを聴きながら、ゆっくり走る。乱暴な運転をする車がいても、気にならない。元に戻った数字の1のわたしには、「おいおい、事故るなよ」と知らない誰かを心配してあげる余裕もある。
 
からだはときどき、そうやって元に戻してもらうけれど、気持ちがくねくね曲がりくねってしまう時がある。数字の2どころか、メビウスの輪になってしまったんじゃないかってほど、収拾がつかなくなる時がある。
「到底、数字の1には戻れないよ」
落ち込みつつも、ぶつぶつつぶやきつつ手にとるのは、いつも大沢在昌のハードボイルドだ。読み進めていくうちに、曲がりくねった気持ちが、少しずつ元に戻っていくのを感じる。
人として正しくあるには、なんてことは、これっぽっちもかいてない。けど、小説の真ん中に数字の1的まっすぐさで、それが通っている。
なので、大沢在昌はけっこう読んできた。
メビウスな日々に、時間が取れず本を読めないときには「オオサワアリマサ」と唱えたりもする。
今、手元にその大沢在昌の『語りつづけろ、届くまで』(講談社)がある。普通のサラリーマン坂田が、人がいいゆえに極道の犯罪に巻き込まれていくシリーズ3つ目だ。うれしい。
来週、友人達と「生ビールたった5杯で愚痴こぼし放題の会」をすることになっているが、それまでにぜひ、数字の1に戻っていたいと思っている。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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