はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『火星に住むつもりかい?』

伊坂幸太郎の新刊『火星に住むつもりかい?』(光文社)を、読んだ。
平和警察なるものが、日本を支配していくストーリーだ。小説は、危険人物と思われる人間を逮捕し、冤罪であろうとなかろうと、物見遊山の人だかりのなか公開処刑する世の中を描いている。これから罪を犯す恐れがある、というのだから証拠はいらないのだ。
人は、慣れていく。こういうものだと、思ってしまう。自分が、処刑される側にさえならなければ、その可笑しな世の中に疑問を持つ気持ちも、自然消滅する。こんなのは可笑しいと声を上げる人は、次々に処刑される。余計に、誰も何も言わなくなる。戦時中の日本を思わせるような状況が、物語のなかでは、リアルに創られていた。以下、本文から。

「あの、正義って何でしょう」それは本心から生まれた質問だった。
警察とは治安を守る、正義の側の組織ではないのか。しかも平和警察には「平和」の文字もある。そのメンバーがこうして、自分を閉じ込め、恐ろしい話をしてくるのが信じがたかった。しまいには「それなら火星にでも住めばいいだろうに」と捨て台詞にも似たことを言うのだ。
加護エイジは憐れみをたっぷりと浮かべ、笑った。
「こちらの正義は、あちらの悪、そんなことはあちこちにある。どんな正当な罰でも、受けた側からすれば悪、となるからね。だいたいどんな戦争だって、はじまるときの第一声は同じだというよ」「何ですか」
「『みんなの大事なものを守るために!』」加護エイジが目を細める。
「戦争はそのかけ声ではじまる」

読み始めると、止まらなかった。分厚さを感じず、一気読みした。伊坂は、インタビューで娯楽小説だと言っている。無論、面白かった。胸に痛みを覚えつつも、読み進めずにはいられない面白さがあった。しかし、伊坂に問いただしたいような気持にもなる。
「これ、これから起こる本当の話じゃないですよね?」
もちろん、伊坂は、笑って否定するだろうが。

英語タイトルは『LIFE ON MARS?』伊坂が、よく聴く
デヴィッド・ボウイの曲だそうです。その和訳は「火星に生物が?」
それをこの本のタイトルのような意味だと、勘違いしていたとか。

本を開くと、綺麗なラベンダー色の見返し。栞も、合わせた色です。




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水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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