はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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冷たい朝にやさしい卵雑炊

冷たい雨が降る、ひとりの朝。
卵雑炊が食べたくなった。温まるやさしい味が恋しくなったのだ。

冷凍しておいたご飯をチンして、鶏がらスープを溶いた鍋に放り込む。
そこで、逡巡した。溶き卵雑炊にするか、丸ごと卵半熟雑炊にするか。
誰かと一緒なら、迷わず「どっちにする?」と聞く。
しかし、ひとりご飯だ。自由とは、逡巡の種も増えるということ。
溶き卵の黄色い色合いと、やわらかさ。丸ごと卵の半熟の黄身を、レンゲで割る魅力。どちらも捨てがたい。
逡巡の結果、卵2個で両方楽しむことにした。自由とは、選択肢の幅が広がるということでもある。

卵料理っておもしろい。混ぜるか混ぜないか、生で食べるか加熱するか、半熟にするかしっかり熱を通すか。冷凍卵という選択肢もある。このあいだ読んだ重松清の『ファミレス』には、卵料理が嫌というほど登場する。そのなかに、卵についてなるほどと得心するような会話もあった。以下本文から。

「黄身だけでもダメ、白身だけでもダメ。卵ってすごいと思わない? 黄身と白身っていう全然違うものが一つの殻に入ってて、それぞれにおいしいんだけど、でも二つ合わさったときのおいしさっていうのは最高なんじゃない?」
ドンは素直に「はいっ」と応えた。直立不動である。目もまっすぐにエリカ先生に向けている。まさに人生の師と向き合う態度なのだ。
「ねえ、それって、家族と似てない?」「・・・家族、ですか」
「別々のものが一緒になっておいしくなるのは、まさに家族でしょう? しかも、卵には殻が必要なの。殻がないと黄身も白身も外に流れちゃうんだから。家族にも、うっとうしいかもしれないけど、殻みたいな存在が必要なの。それが、厳しいおばあちゃんだったりするわけよ」

ひとりご飯で卵雑炊を食べ、家族を思う梅雨の朝。
わたしは、殻でも黄身でもない、たぶん白身のような母であり妻なのだろうと考えてみる。けれど、スポンジケーキが膨らむのは白身のおかげだ。家族に空気を含ませ風通しを良くするのが、白身の役目ってことかな。

丸ごと卵と、溶き卵。やさしい気持ちになる色合いですね。

葱は、雑炊には必須です。食欲も、そそられます。

丸ごと卵の黄身を、ご飯に絡めて食べる瞬間が好きなんです。

おかわりは、丸ごと卵がないので淋しくて、つい京七味を。
優しい味を求めつつ、いつも辛さの誘惑に勝てないわたし・・・。

これは、また別の日に作った『ファミレス』に出てくる卵かけご飯。
中学生男子ドンが、初めて料理に挑戦するシーンで作りました。
食べるラー油をご飯にざっと混ぜ、生卵をじかに割り入れます。

「オレ、前からずーっと思ってたんスよ。日本語の意味、違うじゃんって」
今世の中で食べられているのは、ほんとうに「卵かけご飯」なのか?
正しく表現するなら、あれは「卵混ぜご飯」と呼ぶべきではないのか?
「だからオレ、ここは一発、基本に戻って『混ぜない』ことにこだわってみようと思って」・・・ドンタマを作ったシーンより。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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