はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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ポストに入っていた沢庵

東京に一泊して帰ると、郵便ポストのなかには、新聞と2日分の郵便の他に、包装紙の小さな包みが入っていた。
「けっこう重いな。何だろう?」
開けてみようと、包装紙をよくよく見ると、林を隔てたお隣に住むご主人の名前がかいてある。そしてその名の後には「作」と続いている。お、お隣りのご主人の作品、と期待しつつ包みを開くと、やわらかく黄色い沢庵が出てきた。糠がついたままのものをビニールに入れ、折り曲げて包んであったのだ。

さっそく糠を洗い、切ってみた。綺麗な黄色である。塩味もほどよく、食べた途端、夫と顔を見合わせ「美味しい!」と口に出さずにはいられなかった。
お礼の電話をすると、今年のは自信作とのこと。毎年、試行錯誤しつつ漬けている様子だ。出来上がりを楽しむばかりで申し訳ないが、毎朝切っては、嬉しくいただいている。手作りならではの優しい黄色が、朝食に花を添えてくれているかのようだ。

先日観たばかりの映画『繕い裁つ人』で、印象的だったシーンを思い出した。
「美味しいお茶を淹れるには、何が大切だと思う?」主人公、市江に高校時代の恩師が聞く。「真心、とか?」自信なさそうに答える市江は、裁縫以外のことは何もできない。「真心だけじゃ、だめ」恩師は言う。茶葉選びから、お湯の温度や茶葉の蒸らし時間、何度も繰り返し淹れてみる研究心、技術の会得。「そういうことに時間をかけて美味しく淹れられるようになるためには、真心が必要だってことなの」

お隣りのご主人が漬けた沢庵は、間違いなく真心にあふれている。毎朝、ぽりぽりとその真心を、炊き立てのご飯と共にいただいている。

春を思わせる淡い黄色が、美しいです。うーん、芸術品。
*映画のなかの台詞は、記憶にあるもので、映像通りではありません*

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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