はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『あなたに贈るⅩ(キス)』

本を衝動買いする時、多くの人がそうかと思うが、作家で選ぶ。
そして大抵は、出先で読んでいた本を読み終えてしまったり、持っている本を読む気分じゃなかったり、といった時に購入することになるので、基本、荷物にならず、電車での移動中で読みやすい文庫本だ。ミステリーが多いのは、気軽に楽しめるからだろう。
そんな状況で手にとったのが、近藤史恵『あなたに贈るⅩ(キス)』(PHP文芸文庫)だったが、当たりといえた。洗練された文章で、さらりと描かれた切なく純粋な思い。そして秀逸な謎解き。帯には「青春ミステリー」とある。

近未来。唇と唇を合わせることは、国際的に禁じられていた。感染から数週間で100%死に至る新種ウィルスの感染ルートが「キス」だけだと判明したのだ。主人公である高校1年の美詩(みうた)の世代では、頬やおでこにするのは「キス」と呼ぶが、唇と唇を合わせることは考えるだけでも淫らで恐ろしい行動であり、愛を確かめ合うものではなくなっていた。
物語は、美詩が慕っていた先輩、織恵が、そのウィルスで死んだところから始まる。ウィルス研究者の父を持つ梢に犯人を捜そうと持ちかけられ、美詩は、織恵を殺した発症しないウィルス保持者、キャリアを探し始めた。

近藤史恵のあとがきが、素敵だった。以下、あとがきから。

もちろん、この本が誰かを救うなんて大それたことは考えていない。それでも十代の頃のわたしはきっとこの本を気に入るだろうし、ポケットに詰め込んだ小石のうちの、小さな一粒になったかもしれないとは思う。
本という鎮痛剤が効くのは、一日か、せいぜい数日かもしれない。だが、人生なんてその一日の繰り返しなのだ。

「鎮痛剤」という表現に共感した。
個人的には、本に娯楽以外のものは求めず、という姿勢で趣味である読書に臨んでいるのだが、そうか、鎮痛剤だったのかと思えば、腑に落ちる。本を読んでいると、求めずとも向こうからやってくるモノは、大きい。つかの間効く色とりどりの鎮痛剤達は、わたしに日常を忘れさせてくれるのだ。

駅ナカの本屋さんで買い、駅ナカの喫茶店で檸檬ミントティーを
飲みつつ、電車待ち。便利な世の中になったなぁ。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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