はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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答が出ない問いを読み解く

「もし、自分が、生きてはいない存在だったら?」
自分さえも疑わざるを得ない状況で、物語は進んでいく。そんな恐ろしさが『アナザー』(角川書店)にはあった。

26年前、事故死したクラスの人気者の死をクラスメイトは受け入れられず、まるで一緒に過ごしているかのように振る舞った。そして卒業を迎え、卒業写真に写った死んだ子の笑顔を見て愕然とする。その時から、夜見山中学3年3組は、死に近い場所となった。その翌年から、3年3組の生徒とその家族が事故や病気で何人も死ぬようになったのだ。
「災厄がある年」死が続けさまに起こる年は、最初のホームルームで机が一つ足りなくなるという。「アナザー」もう一人の誰か。生きてはいない誰かが、3組に入り込んでいる。それが誰なのか、記憶はすべて改ざんされ、誰にも判らない。紛れ込んだ本人にさえも。

読み終えたばかりの続編『アナザー エピソードS 』は、続編というよりは、エピローグまたは番外エピソードと言った方が似合う小説だった。
『アナザー』のように多数の死者が出る訳でもなく、ホラー的要素は薄い。
夜見山中学の災厄の生き残りのひとりが、垣間見た死をどう受け止めたのか、そこに焦点を当てて描かれている。綾辻行人、得意の『館シリーズ』の匂いや、どんでん返しは当たり前にあり、楽しんで読めたが。
エピソードS の「S」は、夏 summer、秘密 secret、海辺 seaside など、いくつもの S を散りばめた、とは作者。S を探しつつ読み進めていくのものもまた、面白いかもしれない。

『アナザー』はホラーといわれるが、悪者は誰一人いない。「死」を受け止めるってどういうことなのかと、答えが出ない問いを、漠然と投げかけている。

アニメっぽい表紙は、好みじゃないんだけど。
この少女がヒロイン『鳴(めい)』眼帯のなかは、死の色が見える義眼。

カバーをとると、装丁、凝ってるなーって感じの凝りよう。
『耳なし芳一』を思い出すのは、わたしだけ?

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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