はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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彼女が本を好きになるまで

大学1年の末娘は、帰省して3泊すると「サークルの合宿があるから」と早々に、大学のあるさいたまへ帰ってしまった。たったの3泊4日の帰省なのに、鞄のなかには分厚い文庫本が3冊。本が好きなのは、相変わらずだ。

今の彼女からは想像もつかないが、小学3年生までは全く本を読まない子どもだった。7つ上の息子と4つ上の娘には、幼い頃毎日のように絵本を読んでいたわたしも、3人目ということもあり忙しさもありで、彼女にはあまり本を読もうとしなかったのだ。
そしてようやく子育ても落ち着き、気がついた。末娘が本を読まないことに。このままではいけないと、重い腰、というか上げ忘れていた腰を上げたはいいが、何をしたらいいのかと考えあぐねた。上の子達は、読むペースや分野に違いはあれど、自然と本に馴染んでいたからだ。
わたし自身も、読書に対し考え方の違うお母さんの話を聞き、何か違うんじゃないかなと思うところもあった。本を読むと国語力がつくから、子どもに読ませたい。あるいは、知識が身につくから、また、情緒や想像力が豊かになるから。上の子達が高校生、中学生に育っているのだから、受験やなにやら勉強に絡め、読書について様々な考え方を持つ人がいるのだと知った。

だが目を閉じじっくりと考えるにつけ、何か違うという思いは深くなっていく。何かを身につけるため? そもそもそこが違う気がする。国語力がつくから本を読みなさいと言って、本を読みたいと思う子どもがいるだろうか。
「やっぱり本は面白いから読むんだ。他のあれこれは後からついてくるかも知れないけど、ついてこなくたって、まあいいだろう。まずは読まなきゃ始まらないんだから。大切なのは、本を読む楽しさを教えてあげられるかどうかだ」
気持ちはストンと落ち着き、わたしは「娘が面白く読める」ところにだけに焦点を当て図書館で本を借り「面白くない本は読まなくていい」と呪文のように唱えた。そしてほぼ1年間で彼女は本が好きな子どもへと変身を遂げたのだ。

今でも時々、口をついて出てしまう。「面白くない本は読まなくていいよ」
「うん、そうだね。読書は娯楽だからね」と、末娘。そう言いつつも、彼女は笑って言うのだ。「本がない人生なんて、絶対に考えられないけどね」

末娘が面白いと言っていた、中村文則の『銃』(河出書房新社)
「昨日、私は拳銃を拾った。あるいは盗んだのかもしれないが、
私にはわからない」この出だしに、ハートを撃ち抜かれました!

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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