はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『炎上する君』

「絶望するな。俺達には西加奈子がいる。」
帯にかかれた、又吉直樹の言葉である。
又吉オススメの西加奈子の短編集『炎上する君』(角川文庫)を、読んだ。
不思議テイストいっぱいの短編ばかり8編、集めた本だ。
表題作は、足が炎上している男がいるという噂を聞いた二人の女性の物語。
梨田、三十二歳は、親友、浜中と共に、男に媚びることなく生きてきた。
以下本文から。

小学校のときから、いやさ、物心ついたときから、私は、自分が女であることを呪っていた。女であるがために、容姿の品定めをされ、性欲の対象としてあらねばならない。そして、不細工であると宣告された者は、生きる価値さえないような待遇を受ける。私は、女、それも不細工な女であるということで、いわれのない迫害を受けてきた。小さな頃から、ずっと。ずっと。女であることを、捨てたかった。だからといって、男にはなりたくなかった。女の品定めをし、無恥な性欲をもてあます、阿呆な男には。
女にも男にもなりたくない私は、では、何だったのだろうか。

西加奈子ってすごいなあと思うとき、大抵それは、人間の根底を深く深く見つめようと、これでもかというほど掘り下げていくところにある。足が炎上するという現実ではありえない設定の小説であっても、主人公達は真剣に自分を見つめ、生きている。そして女にも男にもなりたくなかった私は、ついに恋に落ちるのだ。以下本文から。

恋愛のさなかにいる君、恋の詩をつづる君、恋の歌を歌う君よ。
周囲の人間に、馬鹿にされるだろう、笑われるだろう、身の程知らずだと、おのれを恥じる気持ちにも、なるだろう。だがそれが、何だというのか。君は戦闘にいる。恋という戦闘のさなかにいる。誰がそれを笑うことが出来ようか。
君は炎上している。その炎は、きっと誰かを照らす。煌々と。熱く。

恋 = 炎上、という比喩、などと簡単に言うなかれ。ああ、こういう気持ちだよ! と、すとんと腑に落ちるほど、リアルに胸に迫ってきたのだ。

表紙の絵も、西加奈子が描いたものです。多才な人なんですね。
解説は又吉直樹。帯の文句も、その解説文から抜き出しています。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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