はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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旅立ちの季節に

チャイムが鳴ったので出てみると、斜向かいの娘ちゃんが笑顔で立っていた。
斜向かいに住む 5人家族は、お父さん、お母さん、娘ちゃんとその弟くんがふたり。我が家より歳若い家族だ。
「明日、家を離れることになったので」
娘ちゃんは、隣りの県の大学に進学するのだと言った。希望、という言葉を感じさせる笑顔だ。
「父と母を、よろしくお願いします」
しっかりした口調で言う。
「まだ、弟くん達がいるじゃない」
「そうなんですけどね」
心配そうな顔を見て、やっぱり女の子がいなくなると花が一つ消えたみたいに家は淋しくなるんだろうなと思う。我が家は、3年前に末娘が同じように大学進学と同時に家を離れ、子ども達はみな県外に出た。気持ちは判るつもりだ。
「おめでとう。わざわざ、挨拶に来てくれて、うれしかった」
そう言うと、彼女はちょっと困ったように言う。
「父が挨拶して来いって。わたしは、こういうことするの返って迷惑なんじゃないかと思ったんですけど」
「そんなことないよ。来てくれて、ほんとにうれしかった。顔を見られてよかったよ。がんばってね。Let‘senjoy!」
「ありがとうございます」

本当は、何かお祝いを渡したいくらいの気持ちだった。でも何かを渡すより、今言葉を交わすことの方が大切なのだと思った。こういうときに何かあげたいなと思う気持ちって、ごく普通に湧いてくるものだと思うけれど、モノに替えたりせずに「おめでとう」のひと言に気持ちを込めることにした。こうして来てくれて、おめでとうと言わせてくれた。それでじゅうぶんだ。

帰り際に、プレゼントのつもりでひと言だけ言った。
「中学校の桜、半分くらい咲いてたよ。明日、出がけに寄ってもらったら?」
「ほんとですか? はい。そうします」
彼女が通う大学の辺りでも、桜は咲いているだろう。それでも、通った中学の桜を見るのもまた、よかろう。
春。旅立ちの季節なのだなあ。

明野中学校の桜です。入学式に合わせたように、咲きました。

何本あるんだろう。明野町の桜の名所は小中学校の通りです。

近づいて見ると、蕾のピンクが可愛らしいな。

濃いピンクの桜も、咲いていました。

中学校の向かいにある、学童保育所の桜です。

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