はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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「いっさら、見んずら」

北風が、吹き始めた。
まだまだ本番ではないが、八ヶ岳を覆った雲が準備している姿が見える。
冬はもう、すぐそこまで来ているのだ。
あの雲のなかで、八ヶ岳の山々は、うっすらと雪化粧していることだろう。

ここ明野町がまだ村だった13年半前、縁もゆかりもない土地に、わたし達家族は、赤松の林に家を建て、越して来た。
毎日を過ごすにつれ驚いたのは、北風の強さとその音だった。松林が奏でる風の音を、車が通過する音と聞き分けられず、歩いていて何度車を避けようと振り返ったことか。しかし、そこにはただ北風が笑って吹いているだけなのだ。
南アルプスや八ヶ岳の山々の美しさにも、圧倒された。八ヶ岳を窓から眺められる場所にと、選んだ土地だ。だが、地元の人からすれば、何故にこんなにも八ヶ岳から吹き下ろす北風にさらされる場所に家を建てるのかと、不思議がられていたようだ。

立ち話をしていて「山が綺麗ですね」と言うと「山なんか、いっさら見んずら(ちっとも見ない)」と言われた。彼らが見るのは、八ヶ岳にかかった雲なのだそうだ。雲を見て「北風が吹く」「八ヶ岳下しが来る」と判ると言う。
静かな朝でも、綿菓子で覆ったような雲が八ヶ岳全体に広がっていると、午後には必ず八ヶ岳からの冷たい北風が吹き下ろしてくる。これからの季節、晴れた空の下、小雪が混じることも増えていく。

北側の木が育ち、今は窓から眺めることはできなくなったが、散歩の度に、車で走る度に見る山々の美しさには圧倒される。10年以上経っても、山が綺麗だと思ううちは新参者なのかもしれない。しかし新参者だからこそ見えるものがあるのならば、それを失わずにもいたい。
そんなことを思いつつ、北風が強くならないうちにと薪を運び入れた。

朝は、赤岳(向かって右側)の頭が少しだけ顔を出していました。

昼、雲はふんわり乗っかってるといった感じ。

午後、形を変えつつ、だんだん分厚くなっていきました。
夕方には、強い北風が、背の高い赤松を揺らしていました。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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