はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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殺し屋達の狂想曲

『グラスホッパー』(角川文庫)を再読した。読んでいる横から、伊坂幸太郎ファンクラブ(在籍2名)の仲間が話しかけてくる。
「蝉ちゃん、でてきた?」
彼女は、蝉(せみ)のファンなのだ。
「でてきたとこ。3人目殺すとこ」
わたしは、顔を上げずに答える。
蝉はナイフで切り裂くタイプのいちばんわかりやすい殺し屋だ。自殺をさせる自殺屋、鯨(くじら)、道路で背中を押し車に轢かせる押し屋、槿(あさがお)と様々なタイプの殺し屋が登場する。蝉、鯨、槿と言う名は殺し屋業界で彼らが使っている名前だ。(殺し屋に業界があるのかよ?ってセリフが何回かでてきておもしろい)彼らは雇われて仕事をする。殺す相手に私怨はない。
そして主人公鈴木は妻の仇を打とうとする普通の青年で、自ら危ない世界に足を踏み入れていく。「やるしかないじゃない」という死んだ妻の口癖を思い出しながら。
「鈴木の妻っていいキャラだよね。最初から死んじゃってるのに」
仲間がまた話しかける。
「ほんとだよね。回想シーンでしか出てこないのに登場人物中でいちばん好きなキャラかも」
「だから鈴木は、結構頑張れたんだよ」
「君の言う通りだ」
「結構頑張っている」も「君の言う通り」も鈴木が妻を思う時に何度も使う言葉だ。鈴木が妻を思う気持ちが、この殺し屋達の狂想曲の軸にある。
「しじみが水の中でぶくぶく息してるのを見て、生きてるなって思う蝉ちゃんもいいけどね」
「何かと言うとジャック・クリスピン(架空人物)の言葉を引用する蝉の上司もいいけどね」
「岩西か。岩にしみいる蝉の声で蝉とセットになってる岩西ね」
「で『グラスホッパー』の続編『マリアビートル』(角川書店)も貸して」
「えーっ、いいなぁ。だらだらと伊坂再読できて」
「何言ってんの? 君は辻村深月読破まであと3冊でしょ。がんばれ! まあわたしはまだ5冊しか読んでないけどさ」
「なんで読破目前にして、直木賞とっちゃうかな。なぜか悔しい」
「伊坂が4年前候補辞退した直木賞ね。執筆の妨げになるからだっけ?」
「ほんと伊坂って変わってるよねー」「ほんとにねー」
でもいいかといつもそこで落ち着く。直木賞作家になってもならなくても伊坂は伊坂だ。わたしは『マリアビートル』をわくわくしながら受け取った。
まあそれはそれとして、山梨在住の辻村深月さん直木賞受賞おめでとうございます。伊坂幸太郎ファンクラブ(在籍2名)は辻村さんを応援しています。
「でもさ、読み終わっちゃったら来るんだよね。読破喪失感。伊坂の時はマジ落ち込んだ」
辻村さん、彼女のためにもぜひかき続けてください。


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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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