はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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ブラウンマッシュルームの中の宇宙

祝杯をあげた。娘の進学する大学が決まり、部屋探しに出かけた先に、友人が駆けつけてくれたのだ。
娘が新しく生活する地は、埼玉だ。同じ埼玉に住む友人に報告すると、すぐに浦和の南フランス料理店を予約してくれた。とても嬉しい。
難航した部屋探しも何とか終結。娘が納得する部屋を契約できた。肩の荷もすっかり下りて、いい夜になった。
「おめでとう!」と、友人。「ありがとう!」と、わたし。
シンプルだけど、最高に素敵な乾杯。野菜中心で素材重視の美味しい料理に、ハートランドビール。幸せ感じる。こんな風に幸せを感じる時に思い出すのは、伊坂幸太郎の『モダンタイムス』(講談社文庫)に出て来たセリフだ。
「人間は、大きな目的のために生きてるんじゃない」
「もっと小さな目的のために生きてる」主人公、渡辺のセリフ。
このセリフが、大好きだ。人はもっと小さなことのために生きている。たとえば、朝家族とおはようの挨拶を交わしたり、誰かのために料理したり、ぼんやりひとり夕焼けに見とれたり。小さなことだけれど、大切な時間。
そして『ライムライト』のチャップリンのセリフも、続いて引用されていた。
「宇宙の力を考えろ。宇宙の力で地球は動き、樹木は育つ」
チャップリンはこう続ける。「その宇宙の力は、君の中にもある」

友人とふたり楽しくしゃべって過ごした時間は、小さな時間だったかもしれない。だが、娘のことを祝ってくれた友人の気持ちは、わたしの中では宇宙ほど大きくもある。そしてその小さなこと、一つ一つが、わたしの宇宙を広げていくんだなと実感した。人はこういう小さな時間のために生きているんだと、ブラウンマッシュルームを頬張り、しみじみと考えた。
もうすぐに巣立っていく娘のことを淋しくも感じつつ。

静岡産のブラウンマッシュルーム1個を網焼きにし、赤ワインのソースで。
ソフトボール大の巨大マッシュルームは、焼き立てで香ばしく、
ソースもパンにつけてお皿がきれいになるまでいただきました。
マッシュルームの中に、宇宙、感じたなぁ。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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