はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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『アイネクライネナハトムジーク』

伊坂幸太郎の新刊『アイネクライネナハトムジーク』(幻冬舎)を、読んだ。
モーツァルトの小夜曲をタイトルにした、6編からなる連作短編集だ。
モーツァルトは1曲しか出てこないが、音楽と深く繋がっている小説である。と言うのも、ミュージシャン、斉藤和義から恋愛をテーマにした作詞の依頼があり、斉藤ファンである伊坂は、作詞はできないけど小説なら、とかいたというのだ。それが1話目『アイネクライネ』で、2話目『ライトヘビー』は、斉藤和義のシングル初回版特典のためにかかれたもの。百円で今の気持ちにあった曲の一部を流すという斉藤さんなる人物も登場し、歌詞も引用されている。
本人もあとがきにかいているが、伊坂作品にしては珍しく、泥棒も殺し屋も超能力者も出てこない、恋愛テイストの小説集だ。

じつは、読み終えてから一週間が経っている。
夜10時に読み終えて興奮し朝まで眠れなかったほど、かっこよかったのだ。時間を置かずには冷静にかけないと判断し、一週間待った。伊坂ファン故に、こんなにわくわくするのだと自分に言い聞かせる。しかし、ままならない。
「わ、ここ伊坂っぽい! あー、伊坂の文章、かっこいい!やばい。 にやにや笑いがとまらない。全く、伏線回収いったいいくつやるつもりなんだ!」
伊坂の伏線回収には、定評がある。様々なところに伏線を仕掛けておき、それを丁寧に回収していくのだ。小さな驚きから、大きな驚きまで、きちんと用意し楽しませてくれる。すごい作家だなぁと思わずにはいられない。
わたしに、恋は盲目的な部分があるとしても、やはりすごい。伊坂を読んだことがない人に読んでもらって、感想を聞きたいくらいだ。

引用したい部分は数々あれど、雰囲気重視のシーンを選んだ。出会い恋に落ちることについて、主人公佐藤が友人と話しているシーンだ。以下本文から。

「さっきの出会いの話だけど、結局そういうものかもなあって今思ったんだ」
「そういうものって、どういうもの」
「その時はなんだか分からなくて、ただの風かなあ、と思ってたんだけど、後になって、分かるもの。ああ、思えば、あれがそもそもの出会いだったんだなあ、って。これが出会いだ、ってその瞬間に感じるんじゃなくて、後でね、思い出して、分かるもの」
「小さく聞こえてくる、夜の音楽みたいに?」「そうそう」
織田由美には、気の利いたことを言おう、という気負いのようなものはまるでなくて、だからなのか、すっと僕の耳に言葉が入ってくる。
「そういえば、小夜曲ってなかったっけ? モーツァルトの」

ストーリーは、過去に現在に行き来し、様々な登場人物達が交錯する。
「ごく普通の人たちが巻き起こす、小さな奇跡の物語。」と、帯にはある。

表紙をアップにしてみました。何処からか流れてくるメロディ。

ボクサーも、登場人物の一人です。何処かで観戦している人達も。

自転車をこぐ、この少女も、登場人物の一人をイメージしています。
「誰も彼もが自分を避けていくように見える。群れるペンギンのように
 たくさんいるにもかかわらず誰も彼もが素通りだ」
 
カバーをとると、simple な雰囲気に変わります。オレンジの栞が素敵。

王様ペンギンのロゴが、お洒落です。
「悲観的な中で楽観的な話をしたい」著者あとがきより

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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