はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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イタリアの魔法のランプ

神戸から東京に戻り、夕食は目黒にあるトラットリア『ランテルナ・マジカ』(イタリア語で、魔法のランプ)に、食事に行った。
トラットリアとは、リストランテほどかしこまらず、ピッツェリアほどラフではなく、イタリアでも、家族や友人と気軽に、しかしきちんとしたイタリア料理を楽しむことが出来る店を、大抵はそう呼ぶ。

末娘と夫と3人でイタリアを旅してから、もう3年半が経つ。あの頃は、イタリアに夢中で、イタリア料理も図書館で料理本を借りよく作っては食べたし、毎日『テレビでイタリア語』を観て、自己流だがイタリア語も勉強した。今や和製外国語となったイタリア風サンドイッチ『パニーニ』は、実は『パニーノ』の複数形であることも知っているし、『ビッラ(ビール)』は女性名詞だから、助詞であり数を表す『ウノ(1)』を『ウナ』に変換することも覚えている。ところがである。あれだけイタリアで使った「すいませーん。生ビールくださーい!」が、もうすでに思い出せなくなっていた。ショックだ。

そんな脳のなかに絡まったまま仕舞い込んだ思い出を夫と引っ張り出しつつ、懐かしくも気取らず素朴な、だがやたらと美味しいイタリアンを堪能した。
料理も美味しいが、何しろ雰囲気がいい。ふたりともにすっかりくつろいで、気持ちよく酔っぱらった。
「末娘にグラッパを勧められたよねぇ」と、酔って思い出話に浸る、わたし。
「そうそう。ヴェネツィアの川沿いの店ね」と、こちらも酔っぱらって、夫。
グラッパは、ワインの絞りかすの葡萄の皮で作った強い酒だ。
「まだ16歳だから、って断ったら」と、思い出し笑いで、わたし。
「16歳なら、全然オッケーだって、出してくれたよねぇ」と、夫。
娘はひと口舐めて顔をしかめ、グラスを置いていたっけ。

程よく酔いが回った頃、メインの魚料理がサーブされた。それを食べた夫が「あれ、何だっけ?」と、いきなり小声で歌いだした。
「♪ふふーんふ・・・2時間待ってたとぉ♪ ってやつ」
「♪わりと元気よく出て行ったよと♪ ってやつだよね」
「そうそう」「何で今、それ思い出したの?」「この魚のハーブが」
「ローズマリー?」「それそれ。 ♪マリーが来たなら伝えてよ♪」
「それ、マリーじゃない。男だった。でもジュリーじゃあないね」
「えーっ、じゃあ何だよ」「ジョニーだ!」「ジョニーは、アリスでしょ」
「アリスじゃなくてさ、あ! 『 ジョニーへの伝言』だ」
「おー、そうだ。アリスは『ジョニーの子守唄』だ!」
夫はそこでスマホを取り出し『 ジョニーへの伝言』はペトロ&カプリシャスが歌っていたと判明した。そしてまた『ジョニーの子守唄』の歌詞を検索し
「♪おー! ジョニー♪」と、懐かしさにくつくつ笑いつつ、小声で歌いだす。
忘れて困ることも多いけど、忘れるのもなかなかいいかもと、ほろほろ酔いつつ考える。そんなわたし達に、ランプの精から魔法の声がかかった。
「食後酒は、いかがですか? グラッパ、いいのが揃ってますよ」
ふたりさらにほろほろと酔い、くつくつ笑い、さらに様々忘れていく。楽しい食事に欠かせないのは、居心地のいい雰囲気だ。それが満ち満ちた店だった。

『モレッティ』は、久しぶり。ライトなイタリアビールです。

前菜は『鯖の酢漬け』と『チコリのアンチョビソース』をシェア。

夫は『ラビオリ』わたしは『牡蠣のリゾット』
白をグラスで飲んでから、赤ワインをボトルでオーダーして。
この辺りで、ふたりともすでに酔っぱらっていました。

ローズマリーが効いていた『むつの香草焼き』

えーっ! グラッパ、こんなに種類があるの?
     
『ブルネロ・ディ・モンタルチーノ』のグラッパにしました。
「ガッサータ」と、口をついて出た夫のにわかイタリア語も、
「ガス水を」と言い直す前に、判ってくれました。
イタリアの炭酸水、泡が固くて大好きです。
イタリア語、勉強し直そうかなぁ。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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