はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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後ろ髪という記憶の糸

後ろ髪を引かれる、という表現がある。
ことわざ辞典などによれば、未練が残り、なかなか思い切れないさまとある。
最近そんな気持ちになることがよくあるのだが、未練などというたいそうなものではない。例えば、スーパーに買い物に行った帰り、なんとなくホームセンターが気にかかる。後ろ髪を引かれるのである。しかし、どうして後ろ髪を引かれるのかが判らない。なので、そのまま後ろ髪を引かれる思いを振り切って帰ってくる。そして自宅のリビングで窓際を見た途端、思い出す訳だ。
「ああ、夫に、野鳥達の餌を買ってきてって頼まれていたんだっけ」と。

仕事部屋が気にかかり、訳もなくドアを開けることもある。しかし、やはり何が気にかかっているのか判らない。仕事部屋をぐるりと見まわして、それでハッと気づけばまだいい方だ。判らないままに、キッチンで野菜を刻みながら、不意に思い出す。
「そうだ。通帳を取りに行ったんだった」

また、パソコンを開かなくてはならないと開いたのだが、何をしようとしていたのか思い出せず、後ろ髪を引かれる思いでシャットダウン。立ち上がった途端、思い出す。
「あーっ、閉じちゃったけど、生協のオーダーするんだった!」

そんな日々である。全く、嫌になる。しかし、とも考える。ときどき、この後ろ髪さえも引かれず、しっかり忘れていることがある。ひどいときには、思い出したはずなのに、忘れていたという意識さえ飛んでいることも。
今は繋がっている、この後ろ髪という細く頼りない記憶の糸。大切にしていかなくては、としみじみ考える。大切にするためには、思い出せないことでも、思い出そうとがんばってみるのが効果的らしい。50代。記憶というものが崩壊していくさまを目の当たりにしつつ、日々がんばっているのである。

庭のヤマボウシにとまる、カワラヒワ達です。
「鳥さん達のために、向日葵の種、忘れないでね~」と、夫。
「判っては、いるんだけどなあ」と、わたし。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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