はりねずみが眠るとき

昼寝をしながら本を読み、ビールを空けて料理する日々
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浮力でウキウキ

伊坂幸太郎ファンクラブ(在籍2名)の仲間から、久々にメールがあった。
この春から県外に出た彼女は、忙しくも楽しい日々を送っているらしく、メールもあまりしてこない。それが写メ付き。
何かと思って開くと「買った(*^。^*)」と、ひとこと。
添付された写真には、伊坂の新刊が写っていた。
『死神の浮力』(文藝春秋)だ。
「出たんだ!?」「本日発売」
短いメールのやり取りをし、わたしもさっそく購入した。

『死神の精度』という短編連作の続編だとは、装丁とタイトルを見れば一目瞭然。『浮力』の方は、長編だ。帯にはこうかかれている。
「娘を殺された。相手は25人に一人の、良心を持たない人間。
                犯人を追う夫婦と、千葉の7日間」
千葉は、死神だ。死神の仕事は、7日間担当した人間の「可」または「見送り」かを判断する。「可」と判断された人間は8日目に死ぬ。

この小説の面白みは、千葉の突飛なキャラクターにある。死神であるから人間の常識が理解できないところも多く、千年は仕事をしていると自分でも言っているが「大名行列みたいだ」とのたとえに「ああ、参勤交代か。懐かしいな」と、ふと言ってしまったりする。
「あの男は、良心がない人間なんですよ」
娘を殺された山野辺の言葉にも、千葉は至って真面目に返す。
「クローンというやつか」
「良い心の良心のほう。両親はいるに決まってるから」
山野辺も、妻、美樹も、苦笑しつつも、千葉を憎めない。

テーマは重い。何しろ、死だ。だが笑いの要素もきちんと組み込まれている。引用がやたら多いところにも伊坂テイストを感じ、ウキウキしながら読んだ。
古代ローマの詩人ホラティウスの「その日を摘みなさい」(今この瞬間を楽しみなさい)や、ギタリスト、ジミ・ヘンドリックスが歌った「僕は今日を生きられない 今日は全然楽しくない」という歌詞や、パスカルの「もし一週間の生涯なら捧げるというのなら、百年でも捧げるべきである」などなど。
千葉は山野辺に、何度も言う。
「おまえもいつかは死ぬ」「人間はいつか死ぬ」
死ぬことについては、わたしは素人だが、けっこう長く生きては来た。生きることについて考えさせられる、エンターテイメント小説である。

庭でワイルドマジョラムの花を摘んでいて、石の上に蝉を見つけました。

エゾゼミ。美しい蝉ですね。半透明な羽に儚さを感じます。
張り上げるように鳴く声は、精一杯「その日を摘んでいる」かのよう。

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HN:
水月さえ
性別:
女性
自己紹介:
本を読むのが好き。昼寝が好き。ドライブが好き。陶器屋や雑貨屋巡りが好き。アジアン雑貨ならなお好き。ビールはカールスバーグの生がいちばん好き。そして、スペインを旅して以来、スペイン大好き。何をするにも、のんびりゆっくりが、好き。
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